ヒトと馬の骨とを比較した図です。


一番の違いは前後肢です。馬は地面を蹴って効率よく早く走るために足先を単純化、軽量化して踵を立ててつま先を蹄に変化させた。だから人のように複雑な機能は無いし足裏の感覚なども無い。棒のようになっています。
獣医の始まりは鍼灸師であったり漢方薬屋だったりしました。そして馬医がいてツボに鍼を刺して治療していた。今も馬専門の獣医がいます。でも昔の動物鍼灸の本を見ると前後肢のツボは少ないし経絡が記載されていない本がほとんどです。ツボの名称も人とは違うのが多く見受けられます。同じ呼称でも位置が違っていたりします。百会が腰の骨盤の真上になっていたり肺兪が前肢の付け根(C6~Th2からくる肩甲上下神経の分岐辺り)にあったりも。
乳中という「足の陽明胃経」の(ST-17)というツボがありますが、その位置はヒトでは前胸部で乳頭の中央(乳首の真ん中)となっています。ですが、犬はオスメスともに脇の下から足の付け根までバラツキはあるものの左右に5つずつ(合計10個)あります。牛や馬は?どうしたらいいでしょうか?種が違っているので違うのは当たり前ですよね。
最近の獣医向けの動物(犬)鍼灸の教本には人の経穴・経絡がそのまま書き写されています。2006年に始まったWHOのコード標記まで付いている。人では合意しても動物では合意形成がなされていないはずだけど。

日本では経絡経穴の国際的な統一を目指して1965年に「日本経絡経穴委員会」が発足し、その年開催された第1回国際鍼灸学会で検討されました。私は当時(社)日本鍼灸師会の理事として会場にいました。そして完成したのが「標準経穴学」です。こういう統一化に向けた取り組みが動物鍼灸においても必要ではないかと考えています。
高さの違い
他の哺乳類と違い今から700万年前頃からヒトは進化の過程で直立二足歩行を始めることで得られたいいコトと悪いコトがあります。
いいコトは手が自由に使えるようになったために器用に手を使って物を摘まんだり(拇指対向性により親指と他の指を向き合わせて挟むようにしてぎゅっと握ることができる)道具を使ったり出来るようになったこと。
悪いコトは重力の負荷を受けて可動域の広い関節部に障害が生じやすくなったり循環器系に負担がかかるようになったことです。
ヒトの身長は頭のてっぺんから足まで約170~180cm、体重約70kg。馬だとサラブレッドで 体高が約160〜170cm、体重約500kg。犬だと体高は約40~70cm、10~25kg程度。二本足のヒトと四肢の動物と比べると上下の差がかなり違ってきます。そして体重を支える足は2本と4本の違いがあります。
馬が骨折すると多くは粉砕骨折となり修復不可能なので尊厳死が選択されます。馬は横になって骨がくっつくのを待てないんです。2日寝かせておくだけで肺に水が溜まり腸の動きが悪くなり血液が全身に巡らなくなります。また下側の肢が麻痺し足の血管が少ないので感染症を起こしやすく手術をして繋ぎ合わせても再び折れるを繰り返します。
ヒトは上実下虚(じょうじつかきょ)とか逆気、頭寒足熱、冷えのぼせなどの人特有の症状を表す言葉が生まれましたし、起立性調節障害、脳貧血、首肩コリ、高血圧(人の2~3倍あるキリンほどではないですが)、胃下垂、腰痛、痔、難産、鼠経ヘルニア、関節炎、関節変形、下肢静脈瘤などが起こるようになりました。だからツボや経絡の意味も違ってきて当然です。
手の構造の違い
ひづめを持つ有蹄類には奇蹄類(ウマ目でつま先が1本骨)と偶蹄類(ウシ目つま先が2本骨)があります。これらに共通しているのは走ることに特化した蹄という爪が変化した硬い角質の器官が足の先端に付いていることで、ヒトで言えばつま先で立っている状態になります。一方食肉目に属している犬や猫の指は5本になっており先端には蹄ではなく爪がありますがヒトのように拇指対向性もなく自由に動くわけではありません。
歩き方も違います。足裏全体を地面に着けて歩く「蹠行(しょこう)」は人やネズミ、リス、サル、クマなど。踵を浮かせて指先(足指の付け根)だけ地面に接地して歩く「趾行(しこう)」はイヌやネコです。そして踵を浮かせ蹄で歩く割と大型のウマやウシ、ヤギなどです。走るということにおいてはとても効率的で歩く動作と走る動作であまり変化が無く心臓も肺も大きいので心拍数も急激に上がったりせず足も単純な構造で軽く爪先(蹄)も硬いので効率的で長距離歩が得意といえるでしょう。
走ることを優先し前肢つまり手の機能が犠牲になったので頭を地面まで降ろして草などを食べなくてはいけない。そのため首や頭骨や舌などが長くなり、それを支える靭帯(項靭帯)や首の筋肉が強化された。
骨格の違い
馬と人は200個ほどで骨の総数はほぼ同じですが背骨は以下のような違いがあります。
| 種 | 頚椎(C) | 胸椎(T) | 腰椎(L) | 仙椎(S) | 尾椎(Cd) |
| ヒト | 7 | 12 | 5 | 癒合(5) | 癒合(5) |
| 馬 | 7 | 18 | 6 | 癒合(5) | 15~21 |
| 犬 | 7 | 13 | 7 | 3 | 20~24 |
また馬の前足は尺骨の遠位部で一体化(癒合)しておりヒトのように橈骨体と尺骨体が離れて動作するような回内・回外運動が出来ません。つまり手の平返しは不可能です。
脊椎動物は軸索動物門の一つで









